日本にはオーディオ機器の科学評論雑誌がない

という文句。スピーカーを探している時に利用したのはもっぱらstereophileのサイトで、日本の雑誌のバックナンバーなどみようとも思わなかった。
現在のオーディオ雑誌は試聴をして、文章の上手い人があれだこれだと感想を言っているだけにすぎない。自作派の雑誌ですら、殆ど測定は行っていない。自作派の人が楽しめるよう機器のウンチクは書いてあっても、なぜかその評価は感想だけ。スピーカーの周波数特性をレビューコーナーで計測している雑誌はない。アンプしかり、プレーヤーしかり。僕が記憶しているのは大昔にstereosound誌がきまぐれに一度やったのを見たくらい。

特性面で測定しても、おおまかにしか音質はわからない、というのは僕もそれなりにやってきているので理解できるけど、感想文の羅列ばかりでは進歩というものがない。その感想にすら「電源ケーブルをとりあえず変えたら良くなった。ケーブル交換推奨」とか書いているようでは……いやべつに否定してませんが……いやはっきり言おう。何も測定もせずにケーブル交換して改善? 頭腐ってるだろ。しかもこういうのがもう業界的に普通なんだな。

どうせ測定しても無駄無駄、各メーカー横並びなんだから、といって、全部感想にしてしまってはもうなにがなんだかわからない。いまオーディオ業界で唯一認められている指標は価格だけである(笑)。例えば、「この価格帯にしてはありえない出来。1グレード上のXXXには表現力で劣るが、方向性はしっかり継承している」なんて評論家先生のユーザー辞書に入ってそうである(笑笑)。

あまりに感想だらけなので、ユーザー側もスペックで選べない。さっき価格だけ、といったけど、ホントにそれくらいしか指標がないので、「いまxxxつかってて、それよりいい音ききたいんですけど」、と言ったら、「トータルxxx万ぐらいで揃えればいいんじゃね、あとは聴くジャンルによってメーカーを……」、みたいなスペック無視のトークがオーディオ業界では可能なわけだ。技術面では遥かにクリアなPC業界で、同じトークはありえない。やっぱりCPUは何にして、なになにするからメモリは要るね、だったらメーカーはxxxがいいんじゃね? という根拠のある展開になるよね、普通。

それもこれも、あまりに測定データが少ないから、なんの考察も進まないし、測定方法も進化しないのである(自作業界だけは進むけど、結局個人の趣味でとまってしまう)。今回僕が必要としたスピーカーにしても、

  • 周波数特性がほどほどに良い
  • 時間軸での整合性を非常に重視
  • フロアスタンディング2way

という条件だったのだけど、雑誌でわかるのはフロアスタンディング2wayだけ。あとは根も葉もないような蘊蓄と感想が並んでいる。で、stereophile様に頼ることになる。
あまりに感想ばかり書いているから、モニタ業界からは無視されるし、価格も高騰するのである。測定という側面で非常に優秀な、今回の条件に一番適合していたearthworksの製品もディスコンになっちゃうし。こういう製品を表舞台にひきずりだせないのはもはや罪だな。メーカー奴隷といわれてもしょうがないだろう。

ともかく雑誌はもっと役に立つデータを出してほしい。感想とともに、測定するべき。科学的観点(ボトムアップアプローチ)と、感想(トップダウンアプローチ)の両輪があってこそ、オーディオ業界が進化するんじゃない? ああでもない、こうでもない、と測定すれば、電源関連だって何かわかるかもしれない。わからないをわからないまま放置ではいつまでもわからないのである。気がついたら哲学者ばかりになってるオーディオ業界、なんとかならないものか。

ちなみに最近恐いと思うのが、大手メーカーも十分オカルト化してきていることである。ぱっと思いつくのが、各メーカーが、よくわからないけど振動対策で音変わるんだよね、とかいっているとか、ソニーの*****氏がHDMIケーブルで音かわるなんていってるのが堂々と載ってたりとか。もう特性面では何も自慢できないから、そういう方向性での差別化しかないの?

てか、やっぱメーカーからの圧力とかで測定できないのかね? どうなのかね。測定上ではディップがあったが素晴しい音だ、きっと測定できない条件が作用しているに違いない、自然そのものだ、とでも言えばいいのでは? なんて。。おもってます。